2007年03月16日

「宋家の三姉妹」アジアが誇る女性映画の傑作

「考えさせる」「役に立つ」「視野が広がる」「楽しめる」
 中国生まれの父は、私によく宋家の三姉妹の話をした。父はいつも自分のことのように自慢そうだった。「宋家の三姉妹は才媛ぞろいなんだ」と。一度、宋美齢を見たことがあるらしい。高校生になって世界史で中国の近代史を学んだ時、父から聞かされてきた話と知識とが初めて結びついた。そうだったのか、と。

 映画「宋家の三姉妹」は、1997年度香港・日本合作映画。「これは必見!」と思った割には見逃し、昨年長女がDVDを借りてきた時にも見逃した。映画を観るという行為にはタイミングがあって、一度見逃すと機会を逸してしまうことが多い。が、今回上海に行って、復元された宋家の旧邸宅を見て感嘆。その場で観る決意をした。

 返還前の香港映画界が総力をあげて製作したというが、その謳い文句に恥じない豪華な作品。上海の大富豪で、孫文を助ける宋家に産まれた三人の娘たちは先進的な教育を受け、アメリカに留学する。

 そして長女靄齢は実業家と、次女の慶齢は孫文と、三女の美齢は蒋介石と結婚する。しかし辛亥革命、国民党と共産党の対立、国共合作と抗日戦争、国境内戦と続く激動の中国現代史の中で、三姉妹の生き方は別れていくのだ。

 アジアが誇る女性映画の傑作である。情感たっぷりの展開には監督の世代を感じるが、それがこの映画にはぴったり! 恵まれた環境で育ち、新時代を開いていく女性たちの自負と誇りを、壮大な歴史ドラマに仕立てて余すところがない。ワダエミの衣裳も見応えがあり、俳優陣も豪華。

 血を流しながら、近代国家へ向かって歩んでいく中国の姿は、同じ東アジアの人間として共感するところが多い。孫文が日本に亡命して結婚式を挙げるかと思えば、国民党が共産党員を粛清しているすきに日本が進軍してくる。この中国との複雑な関わり方の中に、戦前日本の二面性がある。

 最大の敵である日本との戦いより、共産党を目の敵にする蒋介石に、学生達はデモをして抗議する。「中国人同士で闘うな」「銃は侵略者に向けよ」「統一して日本と闘え」と。そして邸宅から車で出てくる蒋介石の正面で、抗議の焼身自殺をするのである。炎に包まれた学生はそれでもなお、蒋介石に向かって歩もうとするのだ。

 この場面は圧巻だ。欧米列強の反植民地にされた上、今度はむざむざと日本の侵略を許していることに、捨て身の抗議をする学生。その熱く激しい救国の情熱に、近代中国の困難な道のりが凝縮されていて、心が揺さぶられる。
監督:メイベル・チャン 1997年:香港・日本合作映画
posted by zeroko at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 旧作・名作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする