2007年12月08日

「呉清源 極みの棋譜」東洋の美、ここに極まれり

☆楽しめる 考えさせる 視野が広がる 

 製作が発表された時から楽しみにしていた映画である。「黄色い大地」「さらば我が愛 覇王別姫」の陳凱歌や、「赤いコーリャン」「初恋のきた道」の張芸謀と並ぶ中国映画第五世代、田壮壮監督の新作。主演は台湾の若手で超美形!、しかも全篇日本語の中国映画だ。

 囲碁をたしなむ者なら誰でも知っている「昭和の棋聖」、呉清源の人生を描いている。私はたまたま、息子さんと知り合いである。何回か観た予告篇から映像の素晴らしさが伝わってきて、大いに期待していた。で、感想をひとことで言うと「東洋の美、ここに極まれり」。静謐で抑制的、映像も音楽も心身に滲み渡るかのごとくだ。
 
 呉清源が14歳で日本にやってきたのは、満州事変が起こる三年前。日中関係は既に悪化の一途をたどっていた。日本人棋士との対局を、新聞は「日中対決」と書き立てる。一切の雑念を振り払い、囲碁一筋に生きようとする呉清源だったが、現実はそれを許さなかった。

 時流とは距離を置き、ひたすら囲碁を打ち続ける棋士たち。次の対局は無いかもしれないと言って、出征していく棋士もいる。昭和20年8月6日、広島で行なわれている本因坊戦の最中に、原爆が投下される。それでも打ち続ける姿は壮絶そのもの。この映画は、徹底して個人に生きる人間たちを描いた物語でもある。
 
 日中の複雑な歴史に翻弄された呉清源は一時、新興宗教にのめり込む。信仰への思いを描こうとした理由を、田壮壮はこう述べている。「私の親達の世代は、若い頃から共産党に奉仕して、文革を経てもなお党を信じている。しっかりした信仰を持つ人は幸せだと思った」。今、中国の若者たちは何を信じているのだろう。それが市場原理でないことを私は祈っている。12月8日、日米開戦の日に記す。
posted by zeroko at 21:51| Comment(1) | TrackBack(0) | アジア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは 受け継ぐから来ました。現在福祉系の大学で科目をもっていますが、一人青島出身の中国人女性がいます。彼女はケアワーカーで働きながら大学で勉強していますが、中国はもはや資本主義ですと言いました。富裕層に売れる車椅子を広めたいといいました。後二回講義がありますが、中国の話もしなければなりません。
Posted by ootu at 2007年12月09日 06:30
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