2006年11月03日

「出口のない海」 海の特攻「回天」の悲劇

 夏の終わりに公開された「出口のない海」。「亡国のイージス」や「男たちのYAMATO」の系列、三番煎じのような印象を受けた人が多かったのではないでしょうか。それが全く違うんですよ!

 人間魚雷「回天」に志願した若者たちの物語です。特攻隊というと神風特別攻撃隊が有名ですが、回天は海の特攻。直径1メートルほどの魚雷の中に人が乗って、敵艦に体当たりするものです。一度入ったら脱出は不可能ですから、はずれてもそのまま艦内で死を待つだけです。よくまぁ、こういうことを考えたものですねぇ・・・。

 1944(昭和19)年8月、正式に兵器として採用されました。こういうことを考えるようになったらおしまい。しかし、そういう常識的な発想ができなくなっていたのです。まぁ、日清戦争以来の大日本主義=アジア侵略が既に、道を踏み外した非常識な行為だったわけですが、その歪みがここに極まったというべきでしょうか。

 国家が個人を圧殺する天皇制イデオロギーの中で、本来なら知的な人間たちも、苦しみながらその論理を肯定していきました。「愛する家族、愛する郷土を守るため」という論理です。そう考えることによって、自分の犠牲を意味あるものにするしかなかったともいえるでしょう。

 しかし、その「国」の実体は「愛する者たちの延長で」はなく、国民を犠牲にして、一部の権力者たちと軍需産業が生き残ろうとする仕組みでしかなかったのです。これが国家と戦争との関係です。愛国心は常に、その現実を隠蔽するためのトリックとして使われます。

 こういう言い方も変ですが、いい映画でした。観客は中高年の男性ばかりかと思っていたけれど、けっこう若者もいました。市川海老蔵や伊勢谷友介らが出ているせいかも。「悲惨さを正確に伝えていない」という意見もあるでしょうが、今はこういう感じじゃないと誰も観に来ないのでしょう。

 有名な、神宮球場での学徒出陣壮行会に参加した後の若者たちの様子、「君は敵の姿を見たことがあるか」と問いかける父との対話など、否応なく時代に巻き込まれていった人々の生き方を内側からたどっています。「カーテンコール」の佐々部清監督ならでは。
posted by zeroko at 16:35| Comment(1) | TrackBack(1) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「回天」を志願した若者たちを題材にした映画を紹介して下さりありがとうございます。
田舎に住んでいると、こうした映画が上映されていることさえ知らないままに過ぎてしまいます。
たまたま私どものサイトの掲示板に、回天の訓練をするための目標船に乗っていた高齢者の体験談が出ていますので、参考にごらん下されば幸いです。
Posted by 戦争を語りつぐ証言 at 2006年11月05日 09:06
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徳山港で回天の模型の除幕式
Excerpt: 朝、徳山港の前を通ると、回天も模型らしきものに垂れ幕が。スーツを着た人が集まって
Weblog: The転勤族
Tracked: 2006-11-04 22:03