黒澤明の「椿三十郎」がリメークされた。もうすぐ公開される。それが何と、角川春樹・製作総指揮、織田裕二主演、森田芳光監督という組み合わせなのだ。もう唖然呆然である。
別に、「聖なる椿三十郎をリメークしてはいけない」などと言っているのではない。ただ、こういう中途半端というか、訳のわからないことをしてもらいたくないのである。いくら原作不足とは言っても、他にテーマがないわけじゃなし。何も「椿三十郎」を『この布陣で』リメークしなくてもいいだろう。うまくいったら、次々にリメークしようという魂胆が見え見えである。
角川春樹は日本映画に、安手のビジネスモデルをつくった張本人である。映画産業の凋落期だったためにもてはやされ、大したことないものを、メディアミックスの大宣伝でヒットさせるという手法を定着させた。麻薬取締法違反で服役していたが2004年に仮出所。また映画制作を始めた。
嫌な予感がしていたが案の定、「男たちの大和/YAMATO」というどうしようもない映画を、自己陶酔的ナショナリズムという時流に乗せてヒットさせ、復活した。次にモンゴルの全面協力を得て、チンギス・ハーンを信長風に描いた意味不明の映画「蒼き狼」を制作した。そして今度は織田裕二主演の「椿三十郎」だ。この人の手にかかると、全てが安手になるのである。
ある人がブログで、「初めて『椿三十郎』を観た若者が、『あ、けっこう面白いじゃん』と思うことを何より恐れる」と書いていたが、同感だ。安手のもので満足してしまうのが怖いのだ。別にB級映画が悪いと言っているのではない。B級映画やC級映画がいくらあっても構わないのである。
ただ名作にはそれなりの風格があって、それが文化の一端を担っている。それをわざわざ、無駄にお金をかけて崩さないで欲しいのだ。資金不足で困っている時に、無駄遣いもいいところである。映画を事業の柱にしようとしているAVEXも出資しているらしいが、見る目がないところに限ってお金を持っているから困る。
まぁ、こんなに憤慨しなくてもヒットしないと思うが、製作員会にテレビ局が入っているから宣伝がすごい。テレビ局にとっては億単位の広告収入。で、結局は露出の頻度で集客が決まる、数字が全ての世の中である。映画はテレビ化する一方だ。製作委員会への参加は、今やネットに押されつつあるテレビの生き残り戦術でもある。でもこれじゃ、映画とテレビは共倒れだ。
2007年11月30日
2007年11月19日
「犯人に告ぐ」時代を描いていないのが最大の欠点
☆ 楽しめる
豊川悦司主演の日本映画、「犯人に告ぐ」を観た。そこそこ面白かったが、何かが決定的に欠けている。それは「時代という視点」だ。携帯電話などの小道具や、街の風景から今の話だとわかるが、そういう背景を変えてしまえば80年代の話にも思える。90年代かもしれないという内容。原作はどうなのかわからないが、これでは奥行きが出ない。
時代を描くことが大切だ。時代の抱える問題を明確に意識して描くことが、いつの時代にも通用する物語を紡ぐことになる。私がここ数年観た中で最も優れた犯罪映画は、韓国映画「殺人の追憶」だ。民主化宣言前後の80年代後半を背景に、迷宮入りになってしまった連続殺人事件を通じて、韓国社会の本質に迫った秀作。あれ以来、面白い犯罪映画に出会えない。ちなみに、豊川悦司が最近い一番い演技をしていたのは「フラガール」。
豊川悦司主演の日本映画、「犯人に告ぐ」を観た。そこそこ面白かったが、何かが決定的に欠けている。それは「時代という視点」だ。携帯電話などの小道具や、街の風景から今の話だとわかるが、そういう背景を変えてしまえば80年代の話にも思える。90年代かもしれないという内容。原作はどうなのかわからないが、これでは奥行きが出ない。
時代を描くことが大切だ。時代の抱える問題を明確に意識して描くことが、いつの時代にも通用する物語を紡ぐことになる。私がここ数年観た中で最も優れた犯罪映画は、韓国映画「殺人の追憶」だ。民主化宣言前後の80年代後半を背景に、迷宮入りになってしまった連続殺人事件を通じて、韓国社会の本質に迫った秀作。あれ以来、面白い犯罪映画に出会えない。ちなみに、豊川悦司が最近い一番い演技をしていたのは「フラガール」。
2007年11月08日
「ブレイブワン」ジョディ・フォスターの皺が美しい
☆ 考えさせる 視野が広がる
ジョディ・フォスターは今、45歳だ。大学を出た後、「ホテル・ニューハンプシャー」(1984年)、「告発の行方」(1988年)などで、女性が受ける深い傷を演じた。また「羊たちの沈黙(1991年)、「コンタクト」(1997年)、「パニックルーム」(2002年)、「フライトプラン」(2005年)などで、困難と闘う女性を演じ続けている。
私にとって、彼女は良き同時代人だ。ハリウッドでも、40歳を過ぎた女優が活躍し続けるのは難しい。シャロン・ストーンは「氷の微笑」でセクシー女優として登場した後、懸命に路線転換をはかったが難しく、結局15年後に「氷の微笑2」に出演することになった。長いキャリアと圧倒的な成功を収めたジョディ・フォスターが、先頭を切って新しい役柄を開拓していく姿は、頼もしいの一語だ。
この映画「ブレイブワン」は、彼女が演じてきた役柄の系譜の上に、犯罪被害者の救済という現代の難問を絡ませた作品。アイルランド人のニール・ジョーダン監督は、ニューヨークをどこかよそよそしい街として描いている。一度銃を手にしてしまったヒロインは、もはや元の人間には戻れない。復讐は彼女を空虚にしただけだった。
それにしても、年齢相応に皺の寄ったジョディ・フォスターの顔の、美しいこと。今の日本の、美肌至上主義はどうかしてる。
ジョディ・フォスターは今、45歳だ。大学を出た後、「ホテル・ニューハンプシャー」(1984年)、「告発の行方」(1988年)などで、女性が受ける深い傷を演じた。また「羊たちの沈黙(1991年)、「コンタクト」(1997年)、「パニックルーム」(2002年)、「フライトプラン」(2005年)などで、困難と闘う女性を演じ続けている。
私にとって、彼女は良き同時代人だ。ハリウッドでも、40歳を過ぎた女優が活躍し続けるのは難しい。シャロン・ストーンは「氷の微笑」でセクシー女優として登場した後、懸命に路線転換をはかったが難しく、結局15年後に「氷の微笑2」に出演することになった。長いキャリアと圧倒的な成功を収めたジョディ・フォスターが、先頭を切って新しい役柄を開拓していく姿は、頼もしいの一語だ。
この映画「ブレイブワン」は、彼女が演じてきた役柄の系譜の上に、犯罪被害者の救済という現代の難問を絡ませた作品。アイルランド人のニール・ジョーダン監督は、ニューヨークをどこかよそよそしい街として描いている。一度銃を手にしてしまったヒロインは、もはや元の人間には戻れない。復讐は彼女を空虚にしただけだった。
それにしても、年齢相応に皺の寄ったジョディ・フォスターの顔の、美しいこと。今の日本の、美肌至上主義はどうかしてる。

