2007年10月11日

「パンズ・ラビリンス」残酷で美しく、悲しくて胸を打たれるファンタジー

☆ 視野が広がる 感動する 

 観る人間次第で様々な解釈が成り立つ、残酷だが美しく、胸を打たれる物語である。打ちのめされる映画でもある。歴史感覚に裏打ちされた独自のファンタジー哲学が、一見平和で豊かな日常を生きる私たちを極限まで追い詰める。天国に行ってしまった恋人が会いに来てくれた、優しい自然の中で癒される・・・という映画を見慣れている日本人に、果たしてこの映画を観る精神力はあるだろうか。                                
 この映画は1944年という設定になっている。既に、その後三十六年間に渡る軍事政権による支配が始まっており、逮捕や処刑を免れた人民戦線側の一部は、山に立てこもってゲリラ闘争をしていた。そういう時代の物語である。                                        
 父の死後、母が再婚したピダル大尉は強圧的で恐ろしい軍人。ゲリラの嫌疑がかかった村人を顔色一つ変えずに惨殺する。そんな父に脅える少女オフェリアは、村はずれにある迷宮の入口で牧神パンに出会い、本当は地下王国の王女であること、満月までに三つの試練に耐えれば、王宮に戻れると告げられる。
 
 現実の世界では次々に恐ろしい出来事が続く。ゲリラは捕らえられ、支援していた内通者が発覚する。こうして過酷な現実に立ち向かう人々と、オフェリアの試練とが交錯していくのである。監督のギレルモ・デル・トロは、日本の漫画やアニメにも詳しいオタク監督とされているが、そういう日本人好みの見方は一面的である。                           
 今回、スペイン・メキシコ合作としてつくられたこの映画で、恐怖の源泉となっているのはファシズムであり、モンスターはピダル大尉である。こういう発想ができるオタクが、日本でも生まれることを望みたい。最後の場面は涙でかすんで見えなかった。過酷な現実に負けずに生きようとしている人間には、強い励ましになるだろう。ファンタジーの原義を考えさせる一作。                                                                            
posted by zeroko at 16:38| Comment(0) | TrackBack(1) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする