太宰治は今の時代の気分に合っている。新自由主義と自己責任論でズタズタにされた日本人の心に、「人間失格」という言葉が響くのだ。生まれ故郷でお披露目された銅像は、うつむき加減。除幕式に来ていた若者は、「こういう人が日本人でよかった」と述べていた。
この静かな太宰人気に目をつけたか、ジャニーズ事務所の生田斗真主演で映画化が決定した。実は太宰作品は5月に「斜陽」、秋に「ヴィヨンの妻」と「パンドラの匣」が公開される。次々に映画化されているのだ。理由の一つは人気に加えて、制作費があまりかからないからと言われている。
このうち、恐らく観るに値するのは「ヴィヨンの妻」ではないだろうか。根岸吉太郎監督、浅野忠信主演だからである。ただし、妻役が松たか子なのが残念だ。興行的成功を考えると、どうしてもこういうキャスティングになる。
一番ひどいのは「パンドラの匣」だろう。何しろ川上未映子主演である。昨年「乳と卵」という何の変哲もない小説で、なぜか芥川賞を受賞したミュージシャン(らしい)。若くて、ちょっと見栄えのする容姿がウリ。露骨なマーケティングだ。
しかもその後、同じ理由で中原中也賞や与謝野晶子賞まで取った。そろそろ短歌でも始めようかと思っていた私だが、アホらしくなってやめた。今度は映画に主演だなんて、いい加減にしてもらいたい。まぁ、悪いのは本人というより製作委員会なのだが。
映画界も東野某や福井某の小説ならともかく、太宰治の小説はもっと丁寧に映画化してたらどうか。こうやってどんどん食いつぶしていったら、もう後がないのだから。そんな安易なことばかりしていると、ジリ貧になること間違いなし。


